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訪問介護との密な連携により、自宅で入浴が可能となった事例


90歳代、女性、要介護3。娘との2人暮らし。傷病名は2型糖尿病、右変形性膝関節症、高血圧、うつ病。既往歴として、妄想性障害があった。娘からは寝たきりにならないように運動したり、散歩ができるようになって欲しい。入浴を嫌がり、清拭も拒む状態で困っているととのことでケアマネジャーから介入の相談があった。

X年2月約1か月ほど、肺血栓塞栓症にてA病院入院。X年6月、ご家族より訪問リハ利用希望あり、週1回利用開始。X年8月頃より、「死んでしまいたい」「テレビに盗聴器がしかけられている」「体に麻薬を打たれた」「娘が狂っている」等、事実とは異なる妄想様の発言が増加し、会話内容の殆どが妄想発言にすり替わってしまう状態であった。麻薬が塗ってあると思い込んでいる食事や内服は拒否し、さらに娘の介助での入浴や清拭、更衣も拒否し、表情は険しく、生活に支障をきたしていた。

排泄・食事以外は居室ソファで臥床し過ごす。自宅内は歩行器を使用し、歩行自立。昼夜とも自宅トイレで排泄するが、排便時、拭く動作は娘の介助が必要であった。更衣・整容・清拭・入浴は娘介助だが拒否が多く、実施できていないことが多かった。HDS-Rは18点であった。

訪問リハの拒否は無く、訪問リハスタッフの声掛には比較的応じてくれる。

開始時の目標として、体調を崩さず過ごし、自身でしている身の回りの日常生活動作が維持でき、自宅で生活が続けられること。開始後6か月状態変化に応じて、上記に加え、自宅にて介助で入浴し、清潔保持ができるとした。

体調管理として、病状観察や状況報告・内服の相談など主治医との連携を図った。精神賦活として、塗り絵の実施(ホームエクササイズとして提供)、塗り絵(昔の生活様式モチーフ)を題材として回想法を用い会話をすることを試みた。身体機能・ADL維持として、運動療法や入浴動作練習を実施した。

清潔保持・自宅入浴に向けて、入浴をしていない期間に浴室へ行く機会を絶やさないように、「輪投げ探し」と称し、浴室を含む自宅内の各箇所に輪投げを配置し、それを探し歩く時に浴室へ誘導する工夫をした。

また、家族以外の介入者の方が介護を受け入れてくれると判断し、訪問介護サービス利用で入浴支援をすることを提案した。利用者様・訪問リハ職員との良好な関係性を活かし、毎回訪問リハ提供時間の終盤にヘルパー職員に来てもらい、直接リハ職員からヘルパー職員に引き継ぐことで介入がスムーズになるように配慮した。ヘルパー職員へ関わり方の助言として、傾聴に努め、信頼関係を築くことを優先してもらい、ヘルパー介入初期は居室で足・手浴、口腔ケアから導入し、関係性を築いていただいた。暖かい時期に、ヘルパーの提供内容を浴室へ移行し実施。さらに暑い時期に、シャワー浴と浴槽浴ができるように、必要な福祉用具の選定を行い、入浴動作・介助方法を実践を交えヘルパーへ指導した。

妄想発言は続いているものの、塗り絵の題材を用いて会話をしている時は笑顔がみられ、妄想発言へとすり替わることはなく「塗り絵をしている時は落ち着く」という言葉も聞かれるようになった。X年12月より、ヘルパー介入開始以降、ヘルパー提供日以外にも口腔ケアを自身で行うようになった。1年ぶりに入浴ができ、利用者様から「体が温まった」と言葉あり、娘、ヘルパー・リハ職員に笑顔を見せてくれた。HDS-Rは24点と改善がみられた。


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